ブルセラ症

ブルセラ症(ブルセラ病)は、ブルセラ菌(Brucella Canis :ブルセラ・カニス)と呼ばれる細菌の感染が原因で起こる病気で、雌雄ともに不妊を引き起こします。また、ブルセラ症はズーノーシス(人獣共通感染症)の一つで、まれに人にも感染します。日本における家畜のブルセラ症は、1970年代にほぼ撲滅(ぼくめつ)されましたが、犬のブルセラ症は現在でも散見されます。これは海外からペットを輸入する際の検疫(けんえき)が不十分だったため、細菌に感染した犬を国内に入れてしまい、それが日本に定着したものと考えられます。

危険度

低い 命に関わる恐れは低いですが、注意が必要です。

かかりやすい犬種

全ての犬種に一般的に見られます。

主な症状

ブルセラ症に感染しても、健康状態に異変をきたすような重い症状が現れることは、ほとんどありません。症状が見られる場合は、オスでは睾丸(精巣)が一時的に腫れ、その後縮んでしまいます。このため、正常な精子が作れなくなったり、無精子症となって不妊となります。メスでは妊娠45~55日頃に流産や死産が見られます。また数週間にわたる膣内からの分泌物(緑褐色~灰緑色)も見られます。一度でも犬のブルセラ症にかかったメスは、その後、不妊や流産をくり返す傾向があります。

予防方法

犬のブルセラ症の予防ワクチンは今のところありません。多頭飼育やブリーダーの場合は、飼育環境をつねに清潔に保つように心がけることが予防につながります。また、犬が流産した場合には、ほかの犬が流産胎子や出産にともなう分泌物などに触れないように注意しましょう。まれに人間にも感染しますので、感染した犬の流産後の排出物や尿を処理するときには、速やかにゴム手袋をはめて行うようにします。

原因

犬のブルセラ症は、ブルセラ菌の感染によって起こります。犬同士の感染は、すでに感染している犬の子宮分泌物や尿、流産時に排泄された胎子や分泌物などに鼻や口を近づけることによる経口感染や、感染犬との交配によって広がります。また、汚染された媒介物による感染も起こります。犬のブルセラ症は、ブリーダーの犬舎やペットホテルなど、犬が多く集まる場所での感染が多く見られます。

治療方法

犬のブルセラ症の治療には、テトラサイクリンなどの抗生剤を2〜4週間投与します。しかし、効果は様々であり、必ずしも完治するとは限らず、抗生剤の投与後に再発することもあります。また、他の犬や人への感染の危険性を最小限にするため、避妊・去勢をすることが推奨されます。ブリーダーや多頭飼育をしている場合には、感染犬をほかの犬の飼育環境から隔離したうえで治療を行う必要があります。