鞭虫症

鞭虫症は、犬鞭虫(べんちゅう)という長さ4~7cmほどの吸血性の寄生虫が、おもに犬の盲腸に寄生して、下痢や血便などの症状を引き起こす病気です。鞭虫の虫卵は感染した犬の糞便中に排泄されます。虫卵の混じった水たまりの水をなめたり、散歩中などに虫卵が身体に付着し、グルーミングの際に飲み込んだりして感染します。知らないうちに感染する為、注意が必要です。

危険度

低い 命に関わる恐れは低いですが、注意が必要です。

かかりやすい犬種

全ての犬種に一般的に見られます。外出頻度に比例して発症するため、子犬よりも成犬で多くみられます。

主な症状

犬鞭虫の寄生が少数の場合には、ほとんどが無症状ですが、多数寄生されると大腸が障害を受けて大腸性の下痢を起こし、粘液や血の混じった下痢便を少量ずつ何度もするようになります。また、犬鞭虫は吸血性寄生虫であるため、下痢だけでなく貧血も見られます。通常、盲腸に寄生することが多いのですが、状態が悪化すると、盲腸以外の大腸や小腸にも寄生するケースがあり、腸炎や栄養不良、脱水症状などの症状が現れ、重篤化していきます。

予防方法

鞭虫症は鞭虫に汚染された地域では繰り返し感染が起こるため、風土病ともいわれるほどです。このため流行地域では、発症予防として月1回の駆虫が推奨されます。また、散歩時や犬が集まる場所では糞便をすぐに回収するようにして、周囲の環境の衛生管理に努めましょう。また、他の犬の糞便が落ちていたら、そこに愛犬を近づかせないよう注意しましょう。虫卵は外界で1年以上も生きるため、飼育環境を清潔に保つことが重要となります。

原因

鞭虫症は、感染した犬の糞便とともに排泄された虫卵が、何らかの拍子で口に入ること(経口感染)で感染します。たとえば、虫卵が混じった水たまりの水をなめる、足などの体表に付着していた虫卵をグルーミングの際に飲み込む、虫卵に汚染された食べ物や食器をなめるなどの行動により感染します。親犬から子犬へは胎盤感染などの垂直感染は起こらないため、幼い子犬が感染することはほとんどありません。重度の感染では、盲腸以外にも結腸(大腸の一部)や、ときに回腸(小腸の下部)にも寄生し、症状がひどくなることがあります。

治療方法

鞭虫症の治療は、鞭虫に有効な駆虫薬を投与すれば、ほぼ駆除することができ完治します。症状が見られたらすぐに、動物病院で治療しましょう。また、下痢や貧血がひどい場合は、輸液などの対症療法を行います。ただし、鞭虫卵は抵抗力が強く、環境中で数年間、感染力を持ち続けます。このため鞭虫の流行地域では定期的な駆虫(月1回など)が必要となります。