僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁(2枚の弁からなる)が正常に閉じなくなってしまう病気です。正常に閉じないことにより、血液が左心室から左心房へ逆流するため、その影響で左心房が肥大します。一番目立つ症状として咳が出るようになり、進行すると肺水腫を起こして呼吸困難になることがあります。治療方法としては、薬による内科的治療が一般的ですが、ごく一部の病院では手術による外科的治療が行えるようになっています。
危険度
一概に言えない 病気の進行具合により危険度は異なるため、一概には言えません。重度になると命に関わる恐れがあります。
かかりやすい犬種
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、マルチーズ、ヨークシャー・テリア、シーズー、ポメラニアンなどの小型犬に多く見られます。加齢にともなって発症しやすくなり、症状がはっきりと出てくるのは10歳以上の老年期に入ってからが多いです。キャバリアの場合は4歳以上で60%にもみられるため、若年齢から注意が必要です。
主な症状
最も目立つ症状として夜間や運動時に咳が出るようになり、重症になると運動をしたがらない、散歩の途中に座り込む、体を横にして寝るのが苦しくなる、息が荒くなるなどの症状が現れてきます。さらに病気が進行して、肺水腫を起こすと、激しい咳や呼吸困難、失神などの症状が出やすくなります。
予防方法
予防法はないため、早期発見・早期治療が大切です。この病気は心音の聴診による心雑音で発見されることがほとんどですので、気になる症状があるときには、早めに受診しましょう。
原因
多くは僧帽弁の変性によって起こりますが、その変性そのものの原因については分かっていません。また、心臓内において僧帽弁につながっている腱索および乳頭筋とよばれる場所に異常がある場合にも、2枚の弁の間に隙間が生じ、血液が逆流してしまいます。また、この病気の発症には、一部に遺伝因子も影響していると言われていますが、原因となる遺伝子までは明らかになっていません。
治療方法
症状の緩和と病態の進行を抑えることを目的とした、食事療法や体重管理、運動制限、そしてACE阻害薬や利尿剤などの投薬といった内科的治療が主流となっています。これは対症療法であり、病気を根本的に治す治療法ではありません。定期的に検査を行いながら、病気の進行度や症状に合わせた投薬を行うことが大切です。また、もう一つの方法として、外科的な手術による治療法は存在していますが、日本では限られた施設でしか行われていないのが現状です。現実的には内科的治療を行うのが一般的です。