毛包虫症は、ダニの一種である毛包虫(ニキビダニやアカラスとも呼ばれる)によって引き起こされる皮膚病です。毛包虫は、人間を含む哺乳類の皮膚に常在し、毛包(毛穴)や皮脂腺に生息しています。マダニなどと違い、非常に小さいため、肉眼では確認できません。この毛包虫が、何らかの原因で異常に増えると、毛穴の炎症を引き起こし、発疹や脱毛などの皮膚症状を発現させます。症状が局所的な場合(局所型)にはほとんどが自然に治りますが、重度になると、斑状の脱毛、フケ、かさぶたなどの症状が全身に広がり(全身型)、細菌や真菌の二次感染を起こすと致命的になることがあります。治療は、薬浴や塗り薬、駆虫薬の投与でダニを排除しますが、治るまでに数か月かかる場合や、なかには一生、治療が必要となる例もあります。
危険度
局所型→【低い】ほとんどは自然に治りますが、注意が必要です。
全身型→【やや高い】 重症や急性症状の場合には、命に関わる恐れがあるかもしれません
かかりやすい犬種
シャーペイ、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、スコティッシュ・テリア、ブル・ドッグ、ボストン・テリア、グレート・デーン、ワイマラナー、エアデール・テリアなど。局所型は2~10か月齢の幼犬に多く、全身型は成犬にみられることが多いです。
主な症状
犬毛包虫症は、目や口の周り、足先などから発症することが多く、斑状の脱毛、発疹、フケなどの症状がみられます。ひどくなると、これらの症状が全身に広がり、膿疱や皮膚の赤みまたは色素沈着による黒ずみがみられ、患部は腫れて盛り上がったようになります。さらに悪化すると、細菌の二次感染を起こし、皮膚が化膿してジュクジュクした状態になったり、ときには敗血症や気管支肺炎を起こすことがあり、命に関わる恐れもあります。
予防方法
早期発見・早期治療が重要です。
原因
犬毛包虫症は、犬の毛包と皮脂腺に寄生しているニキビダニの異常な増殖が原因となります。毛包虫は健康な犬にも常在しており、通常は無症状ですが、大量に増えると、炎症や脱毛を引き起こします。発症する理由は明らかではありませんが、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などの基礎疾患による免疫力の低下、遺伝などの関与が考えられています。
治療方法
毛包虫症の治療は、殺ダニ剤の局所への塗布や薬浴、ダニを駆除する薬剤(飲み薬や注射薬)を投与して行います。薬剤はダニの虫卵には効かないため、しっかりとダニを駆除するためには症状が軽い場合でも1か月、通常は数か月の治療が必要です。また、細菌の二次感染には抗生物質を投与し、免疫力低下につながる基礎疾患があれば、その治療も行います。完治が難しいため、根気よく治療を続けることが大切です。