フィラリア症(犬糸状虫症)

犬のフィラリア症(犬糸状虫症)は、フィラリア(犬糸状虫)という寄生虫の感染によって起こる病気で、治療が遅れると心臓病の症状が現れるようになり、命にも関わることがあります。フィラリアは犬特有の病気のように思われますが、タヌキなどのイヌ科動物に加え、猫やフェレット、さらには人にも寄生することがあります。犬で屋外飼育の場合、3年予防をしていない場合、9割がた感染していると思って間違いないでしょう。フェラリアの寿命は犬の場合5~6年です。

危険度

やや高い 重症や急性症状の場合には、命に関わる恐れがあるかもしれません。

かかりやすい犬種

全ての犬種に一般的に見られます。

主な症状

フィラリア症の症状は、寄生しているフィラリアの数や寄生期間、犬の体の大きさや健康状態によって様々です。寄生数が少ないときは無症状です。数が増えるに従い咳が見られるようになってきます。寄生されてから年月が経過すると、咳や息が荒くなるなどの呼吸器症状が徐々にひどくなり、四肢のむくみ、腹水(お腹に水がたまって膨れること)などが見られ、散歩中に休む回数が増えるなど運動を嫌がるようになります。さらに進行すると、喀血(かっけつ:血を吐くこと)や失神を起こすことがあります。フィラリアが多数寄生している場合には、大動脈症候群(急性犬糸状虫症)と呼ばれる急性症状を起こすことがあります。この場合は上記の症状に加えて、血尿や呼吸困難によって倒れこむ、といった症状が見られます。大動脈症候群は緊急治療が必要な状態であり、治療が遅れると、その死亡率はほぼ100%です。

予防方法

フィラリア症の確実な予防方法は、毎月一回予防薬を飲ませるだけで出来ます。フィラリア予防薬はフィラリアの幼虫が血管に到達する前に死滅させ、フィラリアが心臓に寄生するのを防いでくれるものです。このためフィラリア予防薬の一般的な投薬期間は、蚊の出始める時期の1ヵ月後から、出なくなった1ヵ月まで、とされています。予防薬の投与は、今はもう蚊がいないから、と勝手に中止せず、定められた期間中はしっかり飲ませるようにしましょう。ただし、蚊の活動時期は地域によって異なります。予防期間については、お住まいの動物病院の指示に従うようにしましょう。重要なのは、すでに感染している犬に予防薬を投与した場合、重大な副作用が出るという点です。死亡例もあります。毎年予防はしていても検査が必要なのはそのためです。

原因

フィラリア症は、蚊によって媒介されるフィラリアが、犬に感染することで起こります。フィラリアは、そうめん状の白く細長い寄生虫で、感染は次のような順番で起こります。(1)蚊がフィラリアに感染している犬を吸血したときに、フィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)が蚊の体内に侵入します。(2)ミクロフィラリアは蚊の体内で感染幼虫に成長。次にその蚊がほかの犬を吸血したときに、感染幼虫が刺し口から犬の体内(皮下)に侵入し、寄生します。(3)犬の体内(皮下)に入った感染幼虫は、脱皮をくり返して成長し、2~3か月ほどすると血管に到達します。そして、静脈血管の中をつたって心臓に到着し、右心室や肺動脈に寄生します。フィラリアは感染後半年ほどすると成虫となり、ミクロフィラリアを産生するようになります。⇒(1)へ戻る

治療方法

フィラリア症の治療方法(成虫駆除を目的とした治療方法)には、内科的療法と外科的療法があります。内科的療法は、薬剤によって体内のフィラリアを駆除する療法です。ただし、多数感染の場合に一度に大量の虫を駆除すると、虫体が肺動脈に詰まって命にかかわるおそれがあるので、慎重に投与する必要があります。外科的療法は、心臓や大動脈に寄生したフィラリアを外科的手術で取り出す療法で、急性期のフィラリア症に用います。検査結果や体調、年齢などを考慮して、これらの治療が実施できないと判断する場合は、症状に応じて処方食や薬剤などを用いて、腹水を減らす、咳を抑えるといった対症療法をおこないます。